アヤメの話をするならみつきくんの話もすべきなのでは?
懐かしすぎる(5年前くらいの文章)
「救済」を抗えぬ欲として抱く女の、はじまりのはなし。
某所のキャンペーンに出すつもりだった女の子のオリジン。
ずっと、ずっとだ。
ずっと胸の奥が痛かった。
その痛みは、人と話している時なんかは静かに眠っていて、けれども確かにそこにあって、そこにあるんだという事だけは片時も忘れさせてくれない。
私は手足が動かない子供だった。昔からだ。とはいえ現代日本において手足が動かないことは、少なくとも昔ほどハンデではなく、私は『一般的な手足が動かない子供』として、普通に過ごしていた。
その日、私は定期検診のため、県内でも有数の総合病院へ兄と共に訪れていた。
病院の総合受付。10メートル四方程ある空間と、それに見合うだけの高い天井に施された大きな天窓が綺麗。
天窓に所々あしらわれた色とりどりのステンドグラスが太陽の光に色をつけ、陽だまりは暖かく、私は隣の兄と緩やかに談笑していた。
そんな安穏とした日常は、思いの外大きな音を、物理的にたてて崩れ去った。
*
崩れ落ちた壁。降り注ぐ天窓のガラスが、土煙の中きらきらとひかる。
病院特有の消毒液のにおいは、とうに血と臓物の異臭に上書きされて。
なにか柔らかいものが切り裂かれる音が、またひとつ。すぐ目の前から聞こえて。
どさりと、重いものが落ちる、音。
締め付けられて、喉がひりひりする。四肢と違って従順なはずの口も、舌も、震えるばかりでいうことを聞いてくれない。
べしゃりと地面に崩れ落ちた体を醜くも必死に動かし、半ばすがりつくようにお腹に大穴の空いた兄さんに覆い被さる。言葉が胸につかえて、胃袋から喉までが焼けるように熱い。
やがて、足音が近づくのを感じ、私は重いものを持ち上げるが如くぐっと顔を上げる。
頭上から、ひんやりとした声が聞こえた。
「かわいそうに。怖いの?」と、担い手の少女は首を傾げて囁く。
「泣かないで。だいじょうぶ、すぐ終わるから」
自分の頬に涙が伝っているのを、その時になって漸く自覚する。
……これは、なんの涙だろう。
「ばいばい、お姉ちゃん」
考える間もなく、甘くてつめたい声と共に、心象幻体の大剣が振り上げられる。
ああ――――、
鋒が煌めいた刹那、気づいた。
「……違うよ」
「……?」
私の声に、少女が手を止め首を傾げる。
「違う。怖いわけじゃない」
……こんなふうになってもまだ、私の心の底でぐつぐつと煮えたぎる欲望は消えてくれない。
「……?じゃあ、どうして」
そうだ、私は何も出来ない木偶の坊で、こんなことを思うのも望むのも烏滸がましいことこの上なくて、だから――、だから今だって、本当ははやくもっと大きな声を上げて、みっともなく助けを求めるべきなんだ。生にしがみつくように、何も出来ない私と、私を庇った兄さんを助けてって、声の限り叫ぶべきなんだ。
それでも。
恥ずかしい。浅ましい。烏滸がましい。声を上げる以外何も出来ないくせに。一人じゃまともに生活も出来ないくせに。
こんな風に大口を叩くなんて、私はきっとどうかしているんだ。
「私は可哀想なんかじゃない」
本当は、知っている。なにも違わないって。私は可哀想な女の子だ。
不幸な事故で夢に敗れて、父親を亡くして、唯一残った兄さんも今殺されてしまった、可哀想な女の子。
いやいやと首を横に振る。なにもかも馬鹿みたいで涙が出る。
――――手足が動かない人間が、遍くを助けたいと願うのはそんなにもいけないことなのだろうか。畳む
某所のキャンペーンに出すつもりだった女の子のオリジン。
ずっと、ずっとだ。
ずっと胸の奥が痛かった。
その痛みは、人と話している時なんかは静かに眠っていて、けれども確かにそこにあって、そこにあるんだという事だけは片時も忘れさせてくれない。
私は手足が動かない子供だった。昔からだ。とはいえ現代日本において手足が動かないことは、少なくとも昔ほどハンデではなく、私は『一般的な手足が動かない子供』として、普通に過ごしていた。
その日、私は定期検診のため、県内でも有数の総合病院へ兄と共に訪れていた。
病院の総合受付。10メートル四方程ある空間と、それに見合うだけの高い天井に施された大きな天窓が綺麗。
天窓に所々あしらわれた色とりどりのステンドグラスが太陽の光に色をつけ、陽だまりは暖かく、私は隣の兄と緩やかに談笑していた。
そんな安穏とした日常は、思いの外大きな音を、物理的にたてて崩れ去った。
*
崩れ落ちた壁。降り注ぐ天窓のガラスが、土煙の中きらきらとひかる。
病院特有の消毒液のにおいは、とうに血と臓物の異臭に上書きされて。
なにか柔らかいものが切り裂かれる音が、またひとつ。すぐ目の前から聞こえて。
どさりと、重いものが落ちる、音。
締め付けられて、喉がひりひりする。四肢と違って従順なはずの口も、舌も、震えるばかりでいうことを聞いてくれない。
べしゃりと地面に崩れ落ちた体を醜くも必死に動かし、半ばすがりつくようにお腹に大穴の空いた兄さんに覆い被さる。言葉が胸につかえて、胃袋から喉までが焼けるように熱い。
やがて、足音が近づくのを感じ、私は重いものを持ち上げるが如くぐっと顔を上げる。
頭上から、ひんやりとした声が聞こえた。
「かわいそうに。怖いの?」と、担い手の少女は首を傾げて囁く。
「泣かないで。だいじょうぶ、すぐ終わるから」
自分の頬に涙が伝っているのを、その時になって漸く自覚する。
……これは、なんの涙だろう。
「ばいばい、お姉ちゃん」
考える間もなく、甘くてつめたい声と共に、心象幻体の大剣が振り上げられる。
ああ――――、
鋒が煌めいた刹那、気づいた。
「……違うよ」
「……?」
私の声に、少女が手を止め首を傾げる。
「違う。怖いわけじゃない」
……こんなふうになってもまだ、私の心の底でぐつぐつと煮えたぎる欲望は消えてくれない。
「……?じゃあ、どうして」
そうだ、私は何も出来ない木偶の坊で、こんなことを思うのも望むのも烏滸がましいことこの上なくて、だから――、だから今だって、本当ははやくもっと大きな声を上げて、みっともなく助けを求めるべきなんだ。生にしがみつくように、何も出来ない私と、私を庇った兄さんを助けてって、声の限り叫ぶべきなんだ。
それでも。
恥ずかしい。浅ましい。烏滸がましい。声を上げる以外何も出来ないくせに。一人じゃまともに生活も出来ないくせに。
こんな風に大口を叩くなんて、私はきっとどうかしているんだ。
「私は可哀想なんかじゃない」
本当は、知っている。なにも違わないって。私は可哀想な女の子だ。
不幸な事故で夢に敗れて、父親を亡くして、唯一残った兄さんも今殺されてしまった、可哀想な女の子。
いやいやと首を横に振る。なにもかも馬鹿みたいで涙が出る。
――――手足が動かない人間が、遍くを助けたいと願うのはそんなにもいけないことなのだろうか。畳む
ダントツでアヤメの来歴がヤバい
この辺と比べるとしおちゃんって人生エンジョイ勢よねとかそういうあれそれがあれでそれ
ゆかりさんのこととかいまでもおもいだします
みんなちがってみんないい みんなへ祈る みんなすき