人生3

pray to them

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みつみ
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気づいてるのは知ってたし触れずにおいてくれればよかったのに

図地藤華ってこういうことするよな、のやつ。
めぐりが図地君を好きになる感じのifです。
このifにおいて、図地藤華は言葉めぐりが………………うーーーーーーーん…………幸せにする気は微塵もないですが…………。


言葉めぐりの感情は非常にわかりやすい。
そのまなざしに。はにかみに。
仄かに纏っていたものが、少しずつ積み重なり、滲み出して。

「めぐりさんって僕のこと好きなの?」
「え?」

こんなにもわかりやすい癖に、指摘されれば虚をつかれたような顔をするのでいっそ面白い。

「すき、だけど……」

如何にも「あんまり突然の事で、取り繕うこともできないまま思ったことが口から出ました」といった声だった。

「じゃ、付き合おうか」
「は。え、何に?」
「何にって……」

あえて大げさに肩を竦め、ため息をついて見せる。
対するめぐりさんは、実にわかりやすく、明らかにこの場から逃げ出したがっていた。
当惑した表情のまま目を逸らした先には、この空間の唯一の出入り口であるドアがひとつ。自分を庇うように手を手で握り、少し椅子を引いて。

まあ、逃がすつもりはないし、本人も逃げられるとは微塵も思っていないだろうけど。

「僕と男女交際関係になりませんか?って聞いてるんだけど」
「なんで?」

珍しく、苛立ちを感じる声だった。

「僕もめぐりさんのことが好きだから」
「うそ。それは絶対に嘘」
「どうして?」
「どうしても、だよ。なんとなくわかるもん」
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みつみ
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落下

なんかあったし使わなそうなのでここに置いときます。
図地藤華が「作戦の一部」として落下したらめぐりが追いかけて飛び込んできちゃったらしい。


僕は、彼女が必死へ腕を伸ばすのを見た。
彼女の、泣きそうな顔を見た。
そして、投げ出した僕の手にあの熱い指先が触れるのを見た。

計画が滅茶苦茶だ。思考に反して、僕は彼女の手を掴んでいた。

彼女は繋いだ手から手繰り寄せる様に僕との距離を縮め、僕は何一つ反応出来ないまま言葉めぐりに抱え込まれる。
手に触れた時とは比べ物にならないくらい明確に、今ここにいる彼女の熱を感じた。白檀と、遅れて甘ったるい香りが肺を満たす。守る様に頭の後ろへ腕を回される。地面まであとどれ位だろうか。
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みつみ
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葬式

めぐりが死んで、通夜のあと言葉悟が寝ずの晩をする話を書こうとした痕跡。
そういえば言葉家って神道のおうちだったじゃんとなり、仏教のお葬式とはいろいろ様式がちがそうだったので没になった。


高校卒業の折に買い与えられた喪服へ初めて袖を通すのが、まさかお前の葬式になるなんて。

――言葉めぐりが死んだ。
そう聞かされたのが昨日の午後のこと。
母さんから電話がかかってきた時、俺は普通に大学で講義受けてて。
「講義中だっつの」と思いながら出ずに切って、そしたら追ってLINEの通知が光って。

思わず立ち上がって。
……まあ、俺いつも後ろの方の席にいるから、別に目立つこともなく中抜けして、電話折り返して。

その突然さも、「人を生き返らせる代償として自分の命を差し出した」という死因すら、俺が常日頃から恐れていたもの、そのままで。
何度か悪夢に見たことすらある。デジャヴがすごかった。
帰りの電車の中で、ドア脇の手摺へゴツ、と、少しだけ強めに頭を預けてみて。
普通に痛いし、目も覚めないので、ああ、なんて「悪夢」だと。そう思ったんだっけ。



暗い室内。のぼる煙が一筋。
線香の香りが染み付いた空気を胸いっぱい吸い込んでから、揺れる蝋燭の火をぼんやりとながめ、息をついて伸びをした。

憔悴した様子の伯母さんも、歳のせいかヘトヘトだったおばあも、なんのかんのめぐりを可愛がってた父さん母さんも、他、通夜に参列した親族友人知人一同も、皆帰った。

俺だけが斎場に残り骸の傍らに居る現状は、いわゆる寝ずの番と言うやつで。

現代の葬式においては省略されがちな、「誰かがやらなければならない」ことですらないお役目を俺が仕っているのは……まあ、「やりたかった」以上でも以下でもない。
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