葬式
めぐりが死んで、通夜のあと言葉悟が寝ずの晩をする話を書こうとした痕跡。
そういえば言葉家って神道のおうちだったじゃんとなり、仏教のお葬式とはいろいろ様式がちがそうだったので没になった。
高校卒業の折に買い与えられた喪服へ初めて袖を通すのが、まさかお前の葬式になるなんて。
――言葉めぐりが死んだ。
そう聞かされたのが昨日の午後のこと。
母さんから電話がかかってきた時、俺は普通に大学で講義受けてて。
「講義中だっつの」と思いながら出ずに切って、そしたら追ってLINEの通知が光って。
思わず立ち上がって。
……まあ、俺いつも後ろの方の席にいるから、別に目立つこともなく中抜けして、電話折り返して。
その突然さも、「人を生き返らせる代償として自分の命を差し出した」という死因すら、俺が常日頃から恐れていたもの、そのままで。
何度か悪夢に見たことすらある。デジャヴがすごかった。
帰りの電車の中で、ドア脇の手摺へゴツ、と、少しだけ強めに頭を預けてみて。
普通に痛いし、目も覚めないので、ああ、なんて「悪夢」だと。そう思ったんだっけ。
暗い室内。のぼる煙が一筋。
線香の香りが染み付いた空気を胸いっぱい吸い込んでから、揺れる蝋燭の火をぼんやりとながめ、息をついて伸びをした。
憔悴した様子の伯母さんも、歳のせいかヘトヘトだったおばあも、なんのかんのめぐりを可愛がってた父さん母さんも、他、通夜に参列した親族友人知人一同も、皆帰った。
俺だけが斎場に残り骸の傍らに居る現状は、いわゆる寝ずの番と言うやつで。
現代の葬式においては省略されがちな、「誰かがやらなければならない」ことですらないお役目を俺が仕っているのは……まあ、「やりたかった」以上でも以下でもない。
畳む
めぐりが死んで、通夜のあと言葉悟が寝ずの晩をする話を書こうとした痕跡。
そういえば言葉家って神道のおうちだったじゃんとなり、仏教のお葬式とはいろいろ様式がちがそうだったので没になった。
高校卒業の折に買い与えられた喪服へ初めて袖を通すのが、まさかお前の葬式になるなんて。
――言葉めぐりが死んだ。
そう聞かされたのが昨日の午後のこと。
母さんから電話がかかってきた時、俺は普通に大学で講義受けてて。
「講義中だっつの」と思いながら出ずに切って、そしたら追ってLINEの通知が光って。
思わず立ち上がって。
……まあ、俺いつも後ろの方の席にいるから、別に目立つこともなく中抜けして、電話折り返して。
その突然さも、「人を生き返らせる代償として自分の命を差し出した」という死因すら、俺が常日頃から恐れていたもの、そのままで。
何度か悪夢に見たことすらある。デジャヴがすごかった。
帰りの電車の中で、ドア脇の手摺へゴツ、と、少しだけ強めに頭を預けてみて。
普通に痛いし、目も覚めないので、ああ、なんて「悪夢」だと。そう思ったんだっけ。
暗い室内。のぼる煙が一筋。
線香の香りが染み付いた空気を胸いっぱい吸い込んでから、揺れる蝋燭の火をぼんやりとながめ、息をついて伸びをした。
憔悴した様子の伯母さんも、歳のせいかヘトヘトだったおばあも、なんのかんのめぐりを可愛がってた父さん母さんも、他、通夜に参列した親族友人知人一同も、皆帰った。
俺だけが斎場に残り骸の傍らに居る現状は、いわゆる寝ずの番と言うやつで。
現代の葬式においては省略されがちな、「誰かがやらなければならない」ことですらないお役目を俺が仕っているのは……まあ、「やりたかった」以上でも以下でもない。
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