"切願"
聖杯戦争TRPG、マスター時空の図地藤華の奥義描写。
>>1519の設定を添えてみるともうちょっとわかりやすいかも。
欲しいものがあった。
それが手に入るなら、僕は、富も名声も幸福も、根源も知識も、何もいらなかった。
躰が、心が、意義が、意志が、尊厳が、ズタズタに引き裂かれて踏み躙られたってべつに構わなかった。
劇薬を。
爆弾を。
悲劇でもいい。観客の数は問わない。ただ、劇的な運命を。
誰も無視できない世界の中心に居る僕を、僕は狂おしいほど願い求めていた。
バカみたいに贅沢だ。
頭では理解していた。だから目を逸らした。
逃れようと足掻き、藻掻き、死に物狂いで手放した。
なのに。
――そんな"切願"を、誰かが拾って僕に抱かせた。
願いが叶い、運命に指先が触れた。掴む勇気が出ないまま少し時間が経って。
……そこに、君が現れた。
シオリさん。
君が、僕の抱く贅沢で陳腐な願望を、"善い"と微笑み肯定してくれたから。
僕の願いを本気で願ってくれたから。
だから。
だから僕は、今、此処に、確固たる意味を持って立ちたいんだ。
僕の願いを、我儘に願いたいんだ。
そして、僕もまた君の願いを、心の底から願いたいんだ。
今はただそのために、僕は勝ちたいんだよ。
"切願"を起源に抱く少年は、正に舞台から蹴落とされる、その淵の淵で未だ願う。
自身を貫く原初の一に目醒め、その願いに、想いに、どこまでも塗り潰されていく。
――なぁ、知ってるかい? 図地君。
藤の華は、丁度四月の暮れに咲くんだ。
……緞帳が上がる様を。境界を巻き取る歯車の音を。潜みさざめく観客の息遣いを夢想する。
視線と言う名のスポットライトに照らされて、僕は一歩踏み出し、手袋をつけた右手を掲げ。
タネも仕掛けもありません。
ここにあるのは、僕の"切願"、ただひとつ。
「アサシン」僕の使い魔としての、彼女の名前を呼んで。
「令呪をもって命ずる」
深呼吸と、薄い笑みをひとつ。
頭の中で幾度となくなぞった輪郭へ僕を合われば、心の中で何度も唱えた台詞が、まるで糸に引かれるが如く唇から零れていく。
「――暗殺者の名に相応しい成果を、僕に齎せ。」
手の甲を灼く熱を感じる。あるいは、"想像しただけ"かもしれないけれど、隔てる幕の上がった今、それらの境は既に無いし、どっちだろうと構わない。
世界にとって嘘であろうと、僕にとっては本当だ。
動きも言葉も、心までもが何ひとつ変わらないなら、現実なんて、この際どうだっていいだろ?
「重ねて」
声を張る。誰よりも堂々と。美しく手を掲げて凛と。
やさしい願いを抱く女神の傍らでなお、霞まぬように。
亡き先輩がいつか観る記録の中で、主人公としてあれるように。
ふたつの運命へ、すべてを賭けて捧げるように。
そう、振舞えるように。
「サンタ・ムエルテ」死の聖女たる、彼女の名前を呼んで。
「令呪を捧げ願おう」
一柱の"神様"へ、僕は願う。
始まりはどうあれ、神に対する信頼は信仰に等しい。
そしてその行方が、あらゆる願いを叶える万能の聖女とあらば。
成就は必然、だ。
「死の絶対を。その恐怖を、僕等の相対するもの達へ齎せ――!!」
言の葉は恙なく、けれど相応の重みをもって。
手の甲に燃える一画をまた鮮明に想い描きながら、僕はどこまでも美しく、一礼を。
舌先三寸口先ひとつ。うそとまことは紙一重。
今宵この場は正しく"舞台の上"なれば、役者の台詞(ウソ)が見抜けないのは寧ろ正しいことだから。
オペラグラス越しに真実を見ようだなんて心底バカバカしい。
そうだろ?
/////
『シオリさん』念話にて。僕の友人である、君の名前を呼んで。
『令呪はないけど――』
『頼みごと、してもいいかな』これは、神への祈りでも使い魔への命令でもなく、一人の友人への協力要請。
『僕の隣で、どこまでも』
『君と僕が望むままの、サンタ・ムエルテで、あれ。』
万人の願いを受け入れる、万能の"神様"であれ。
死をもって生を祈ぐ、心優しい聖女であれ。
願うよ。君の願いは綺麗だから、そうであれと僕も願う。
その願いが、どこまで、届くのかは。
運命が、決めることだから。畳む
聖杯戦争TRPG、マスター時空の図地藤華の奥義描写。
>>1519の設定を添えてみるともうちょっとわかりやすいかも。
欲しいものがあった。
それが手に入るなら、僕は、富も名声も幸福も、根源も知識も、何もいらなかった。
躰が、心が、意義が、意志が、尊厳が、ズタズタに引き裂かれて踏み躙られたってべつに構わなかった。
劇薬を。
爆弾を。
悲劇でもいい。観客の数は問わない。ただ、劇的な運命を。
誰も無視できない世界の中心に居る僕を、僕は狂おしいほど願い求めていた。
バカみたいに贅沢だ。
頭では理解していた。だから目を逸らした。
逃れようと足掻き、藻掻き、死に物狂いで手放した。
なのに。
――そんな"切願"を、誰かが拾って僕に抱かせた。
願いが叶い、運命に指先が触れた。掴む勇気が出ないまま少し時間が経って。
……そこに、君が現れた。
シオリさん。
君が、僕の抱く贅沢で陳腐な願望を、"善い"と微笑み肯定してくれたから。
僕の願いを本気で願ってくれたから。
だから。
だから僕は、今、此処に、確固たる意味を持って立ちたいんだ。
僕の願いを、我儘に願いたいんだ。
そして、僕もまた君の願いを、心の底から願いたいんだ。
今はただそのために、僕は勝ちたいんだよ。
"切願"を起源に抱く少年は、正に舞台から蹴落とされる、その淵の淵で未だ願う。
自身を貫く原初の一に目醒め、その願いに、想いに、どこまでも塗り潰されていく。
――なぁ、知ってるかい? 図地君。
藤の華は、丁度四月の暮れに咲くんだ。
……緞帳が上がる様を。境界を巻き取る歯車の音を。潜みさざめく観客の息遣いを夢想する。
視線と言う名のスポットライトに照らされて、僕は一歩踏み出し、手袋をつけた右手を掲げ。
タネも仕掛けもありません。
ここにあるのは、僕の"切願"、ただひとつ。
「アサシン」僕の使い魔としての、彼女の名前を呼んで。
「令呪をもって命ずる」
深呼吸と、薄い笑みをひとつ。
頭の中で幾度となくなぞった輪郭へ僕を合われば、心の中で何度も唱えた台詞が、まるで糸に引かれるが如く唇から零れていく。
「――暗殺者の名に相応しい成果を、僕に齎せ。」
手の甲を灼く熱を感じる。あるいは、"想像しただけ"かもしれないけれど、隔てる幕の上がった今、それらの境は既に無いし、どっちだろうと構わない。
世界にとって嘘であろうと、僕にとっては本当だ。
動きも言葉も、心までもが何ひとつ変わらないなら、現実なんて、この際どうだっていいだろ?
「重ねて」
声を張る。誰よりも堂々と。美しく手を掲げて凛と。
やさしい願いを抱く女神の傍らでなお、霞まぬように。
亡き先輩がいつか観る記録の中で、主人公としてあれるように。
ふたつの運命へ、すべてを賭けて捧げるように。
そう、振舞えるように。
「サンタ・ムエルテ」死の聖女たる、彼女の名前を呼んで。
「令呪を捧げ願おう」
一柱の"神様"へ、僕は願う。
始まりはどうあれ、神に対する信頼は信仰に等しい。
そしてその行方が、あらゆる願いを叶える万能の聖女とあらば。
成就は必然、だ。
「死の絶対を。その恐怖を、僕等の相対するもの達へ齎せ――!!」
言の葉は恙なく、けれど相応の重みをもって。
手の甲に燃える一画をまた鮮明に想い描きながら、僕はどこまでも美しく、一礼を。
舌先三寸口先ひとつ。うそとまことは紙一重。
今宵この場は正しく"舞台の上"なれば、役者の台詞(ウソ)が見抜けないのは寧ろ正しいことだから。
オペラグラス越しに真実を見ようだなんて心底バカバカしい。
そうだろ?
/////
『シオリさん』念話にて。僕の友人である、君の名前を呼んで。
『令呪はないけど――』
『頼みごと、してもいいかな』これは、神への祈りでも使い魔への命令でもなく、一人の友人への協力要請。
『僕の隣で、どこまでも』
『君と僕が望むままの、サンタ・ムエルテで、あれ。』
万人の願いを受け入れる、万能の"神様"であれ。
死をもって生を祈ぐ、心優しい聖女であれ。
願うよ。君の願いは綺麗だから、そうであれと僕も願う。
その願いが、どこまで、届くのかは。
運命が、決めることだから。畳む
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