没エンド断片集
例の小説の没エンドの内、たぶん第三稿~第四稿あたりの断片。
バラバラにして繕いなおして、またバラバラにしてを延々繰り返してたので、すごい細かい破片になってます。
こっちは感情の話しかしてないのでなんでか全年齢。
・第三稿かなあ…?
・
「藤華ね、ずるいと思うよ」
「私のこと好きじゃないのに、私に好きでいて欲しいのはさ、ずるいよ」
その通りすぎるんですが、めぐりにしては理性的に事実を把握しすぎな感じがしたので没に……。
・
だからね。
藤華は、私のこと嫌いだし、死んじゃえって思ってるけど、それでも絶対離れたくはなくて。
私は、死にたくはないけど死んじゃえって思われてるのはやじゃなくて、別に離れ離れになってもしょうがないなって思ってて、それでね。
全部ひっくるめて、藤華のことが好きなの。
でもこれは、お互いに付き合いたいとか、そういうことではないのね。
なんか全体的にへんな感じだよね。
これも察しがよすぎる気がして没になりました。
めぐりは図地君がわかるようにストレートに話すまで、「藤華はちょくちょくいみわかんない!」であってほしい。
・
耳馴染みのないぬくもりを伴った声で
「わかんない、や」
と言って、困った様に眉を下げて笑った。
二人の間に沈黙が降りて、響くのは、効きの悪いエアコンのやたらと大きな稼働音。
めぐりさんが「ゎー」とこちらへ倒れ込んでくる。仕方がないから、僕はめぐりさんを受け止めて、渋々抱きしめる。
晴れた秋の日差しと、めぐりさんのあたたかさはやっぱり心地よくて、遠くから近づく他の生徒の足音を煩わしく思う。
色々話して、「結局めぐりさんは僕と付き合いたいの?」みたいに聞かれての返答。
これすき。
でもめぐりはやっぱこういう、「もたれかかる=触れ合いたい」的なところに行くイメージがなくて、没になりました。
畳む
・おそらく第四稿
薄暗い玄関の中。めぐりさんの常磐色の双眸が、こちらの心を推し量る様に、僕の顔をじっと見つめる。
「あのね」
独り言のようにささやかな。
けれど僕にだけはきちんと届く、相手の手に乗せて握らせるような声量と声色だった。
「私、藤華のことが好きだよ」
「……友達としてね」
正確には、普通の"友達として"とは若干ズレるだろうけど、大枠で間違ってもいないだろう。
僕の淡白な補足に、めぐりさんはほんの少しだけ目を見開いて、ゆらりと瞳を揺らした。
「どうなんだろう、なあ」
へんにゃりと弱りきったように微笑んで、抱えた膝へこてんと頭を預ける。
自分でももうわからない、とでも言いたげな声色だった。
「……じゃあ何。付き合いたい?」
僕はいいけど。なんて、どこか吐き捨てるように響いた言葉へ、めぐりさんはまた「うーん」と眉を下げ、微笑んで。
「…………藤華は?」
不意に質問で返されたので、咄嗟に言葉が出ず、瞬いて見つめ返すことしか出来ない。
「藤華は私のこと――」
「好き?」と、問われるのだと思った。
結構核心的な質問だな、とも思った。
実際、めぐりさんの唇は「好き」の「す」を発音するようにすぼまったし、当然僕は、それになんと返そうか考えて。
……けれど、めぐりさんはそのまま何も言わず、きゅっと口を閉ざしてしまった。
数秒、お互い何も言えないまま、無言の時間が流れた後。
「……きら、い?」
「――――、」
面食らってしまう。
「好き?」ではなく「嫌い?」と聞かれたことにも。訊ねるめぐりさんが、結構寂しそうな顔をしていることにも。
隠していたつもりは無かったけど、気づかれているとも思っていなかったし、めぐりさんは僕に嫌われていてもまあ、なんだかんだ大丈夫なんだろうなと思っていたから。
「どうなんだろう、ね」
めぐりさんを、真似した訳じゃなかったんだけど。
奇しくも同じように返してしまう。頭の中が散らかっていると言うよりは、何を探せばいいのかが分からなくなってしまったような感覚だった。
「あのね」
めぐりさんは、指先で自分の首につけられた噛み痕をくるくるとなぞりながら、今度は僕にも聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声で呟く。
「なかった事に、できなかったよ」
完成稿と比べると、「ちゃんと言語化できてるし、言葉で伝えてるな」ってなります。
現実的な人間関係で考えるならこっちの方がいいんですけど、図地君は「自身の気持ちと向き合って言語化することをなるべく避けている」ひと。で、めぐりは「うまく言葉にできないし察せない」ひとなのが二人の関係のボトルネックでもって味だと思っているので、ここまで踏み込んで、言葉にして解いていくのは個人的に違う感じがして、没になりました。
畳む
例の小説の没エンドの内、たぶん第三稿~第四稿あたりの断片。
バラバラにして繕いなおして、またバラバラにしてを延々繰り返してたので、すごい細かい破片になってます。
こっちは感情の話しかしてないのでなんでか全年齢。
・第三稿かなあ…?
・
「藤華ね、ずるいと思うよ」
「私のこと好きじゃないのに、私に好きでいて欲しいのはさ、ずるいよ」
その通りすぎるんですが、めぐりにしては理性的に事実を把握しすぎな感じがしたので没に……。
・
だからね。
藤華は、私のこと嫌いだし、死んじゃえって思ってるけど、それでも絶対離れたくはなくて。
私は、死にたくはないけど死んじゃえって思われてるのはやじゃなくて、別に離れ離れになってもしょうがないなって思ってて、それでね。
全部ひっくるめて、藤華のことが好きなの。
でもこれは、お互いに付き合いたいとか、そういうことではないのね。
なんか全体的にへんな感じだよね。
これも察しがよすぎる気がして没になりました。
めぐりは図地君がわかるようにストレートに話すまで、「藤華はちょくちょくいみわかんない!」であってほしい。
・
耳馴染みのないぬくもりを伴った声で
「わかんない、や」
と言って、困った様に眉を下げて笑った。
二人の間に沈黙が降りて、響くのは、効きの悪いエアコンのやたらと大きな稼働音。
めぐりさんが「ゎー」とこちらへ倒れ込んでくる。仕方がないから、僕はめぐりさんを受け止めて、渋々抱きしめる。
晴れた秋の日差しと、めぐりさんのあたたかさはやっぱり心地よくて、遠くから近づく他の生徒の足音を煩わしく思う。
色々話して、「結局めぐりさんは僕と付き合いたいの?」みたいに聞かれての返答。
これすき。
でもめぐりはやっぱこういう、「もたれかかる=触れ合いたい」的なところに行くイメージがなくて、没になりました。
畳む
・おそらく第四稿
薄暗い玄関の中。めぐりさんの常磐色の双眸が、こちらの心を推し量る様に、僕の顔をじっと見つめる。
「あのね」
独り言のようにささやかな。
けれど僕にだけはきちんと届く、相手の手に乗せて握らせるような声量と声色だった。
「私、藤華のことが好きだよ」
「……友達としてね」
正確には、普通の"友達として"とは若干ズレるだろうけど、大枠で間違ってもいないだろう。
僕の淡白な補足に、めぐりさんはほんの少しだけ目を見開いて、ゆらりと瞳を揺らした。
「どうなんだろう、なあ」
へんにゃりと弱りきったように微笑んで、抱えた膝へこてんと頭を預ける。
自分でももうわからない、とでも言いたげな声色だった。
「……じゃあ何。付き合いたい?」
僕はいいけど。なんて、どこか吐き捨てるように響いた言葉へ、めぐりさんはまた「うーん」と眉を下げ、微笑んで。
「…………藤華は?」
不意に質問で返されたので、咄嗟に言葉が出ず、瞬いて見つめ返すことしか出来ない。
「藤華は私のこと――」
「好き?」と、問われるのだと思った。
結構核心的な質問だな、とも思った。
実際、めぐりさんの唇は「好き」の「す」を発音するようにすぼまったし、当然僕は、それになんと返そうか考えて。
……けれど、めぐりさんはそのまま何も言わず、きゅっと口を閉ざしてしまった。
数秒、お互い何も言えないまま、無言の時間が流れた後。
「……きら、い?」
「――――、」
面食らってしまう。
「好き?」ではなく「嫌い?」と聞かれたことにも。訊ねるめぐりさんが、結構寂しそうな顔をしていることにも。
隠していたつもりは無かったけど、気づかれているとも思っていなかったし、めぐりさんは僕に嫌われていてもまあ、なんだかんだ大丈夫なんだろうなと思っていたから。
「どうなんだろう、ね」
めぐりさんを、真似した訳じゃなかったんだけど。
奇しくも同じように返してしまう。頭の中が散らかっていると言うよりは、何を探せばいいのかが分からなくなってしまったような感覚だった。
「あのね」
めぐりさんは、指先で自分の首につけられた噛み痕をくるくるとなぞりながら、今度は僕にも聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声で呟く。
「なかった事に、できなかったよ」
完成稿と比べると、「ちゃんと言語化できてるし、言葉で伝えてるな」ってなります。
現実的な人間関係で考えるならこっちの方がいいんですけど、図地君は「自身の気持ちと向き合って言語化することをなるべく避けている」ひと。で、めぐりは「うまく言葉にできないし察せない」ひとなのが二人の関係のボトルネックでもって味だと思っているので、ここまで踏み込んで、言葉にして解いていくのは個人的に違う感じがして、没になりました。
畳む
- ユーザ「みつみ」の投稿だけを見る (※時系列順で見る)
- この投稿と同じカテゴリに属する投稿:
- この投稿日時に関連する投稿:
- この投稿に隣接する前後3件ずつをまとめて見る
- この投稿を再編集または削除する